自己肯定感の作用について
精神衛生において自己肯定感は大切だ、と喧伝されている昨今。本当に自己肯定感は高いほうが望ましいのだろうか。例えば、こういう想像をしてみたらどうだろう?
“X君は自己肯定感がとても高い。それゆえに彼は自らのギターの腕前を過大評価しているが、私たちにとっては明らかに騒音でしかない。私たちは誰かがそれを指摘するように望んでいるものの、彼を傷つけてしまうのを恐れてみな口をつぐんでいる”
この場合、X君が傷つくか、もしくは私たちが我慢を強いられる事態となる。
おそらく、「自分自身に対する評価(自己肯定感)」と「他者からの自分に対する評価」がイコールに近いほど、X君と私たち双方の精神衛生にとって望ましいのだ。そして、それがありのままの自分自身と整合していなければならない。つまり、本来の自分がレベル20なのに「自分自身に対する評価」と「他者からの自分に対する評価」がレベル30だとしたら10レベルぶんのギャップがあることになる。この場合、そのギャップが露呈した時点で本人か周囲の人間の少なくともどちらかが苦しむことになるだろう。
というわけで、自己肯定感を高めることが精神衛生的に望ましいという言説は、ごく一部の事例に限られるのではないか。