カント「純粋理性批判」第3回 宇宙は無限か、有限か
・人間は何を知り得ないのか?
「理性」とは、推論する能力のこと。
どうして夜になると暗いのか?
→太陽が沈むから
どうして太陽は沈むのか?
→地球が廻るから
どうして地球は廻るのか?…
こうして疑問は果てしなく続く。この疑問の連鎖こそが「理性」の本性であり、これによって人間は「答えの出ない問い」を考え続けてしまう。不死なる魂はあるか?宇宙は無限か?有限か?神は存在するのか?自由意志はあるか?など。
カントは、「答えの出る問い(共通理解の出来る問い)」の条件を「時間・空間の枠組みに入っていること」だと考えた。ということは、「答えの出ない問い」とはその条件から外れる問いということになる。そして、それまでの哲学者が考えてきた問いを「アンチノミー(対立する二つの命題が共に証明できてしまうため、どちらが正しいのかわからない状態)」を用いて「答えの出ない問い」だと結論づけた。
4つのアンチノミー
宇宙は無限か?有限か?
物質の最終要素は存在するか?
自由の原因性はあるか?
無条件で必然的な存在者はいるか?
1.は空間と時間の無限性について。
2.は最小の物質について。
3.は自由意志について。
4.は神の存在について。
問い: 宇宙には始まりがあるか?
a. 始まりがないと仮定する
宇宙に始まりがないとすると、永遠に現在は来ないことになる。すなわち、宇宙に始まりはある。
b. 始まりがあると仮定する
宇宙に始まりがあるとすると、その始まりの前には時間が流れていないことになる。となると、その時点から何も起きないはず。すなわち、宇宙に始まりはない。
どちらの説も正しく思えるならばこれはアンチノミーであり、実のところ答えは出ない。
理性の関心
完全性を求める/正しい答えを「全て」把握したい
真理を追究する/全ての答えが「本当に正しいか」把握したい
カントによると、有限説は完全性を求める理性に由来し、無限説は真理を追究する理性に由来する。
カントは、それまでの哲学が取り上げてきたテーマを「答えの出ない問い」として棄却した。そして、哲学が本当に追究すべきテーマとはなにか?とカントは考える。
☆簡単なまとめ
・カントは、それまでの哲学における問いを「アンチノミー」によって「答えの出ない問いである」と結論づけた。
・こうした「答えの出ない問い」は「理性」によって形成される。